宮﨑駿監督とジブリの最新作『君たちはどう生きるか』を観劇してきました。 鑑賞のまとめと自分の鑑賞です。
ネタバレを含みます。知りたくない人は以下を読まないことをおすすめします。
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- 個人的に好きな作家さんの鑑賞。ご自身の作品からも感じられる鑑賞で塔の世界がイマジナリーフレンドという表現がそれもありだなあという納得感。
まとめここまで。
ここからは私の鑑賞です。 ざっくりいってみんなが自分の現実へ進む物語だと解釈しました。
庵野秀明監督がエヴァの最後の作品で観客に対して現実に帰れ自分の道を行けという思いを作品に込めたと評価されています。宮﨑駿監督の今作品もそれに通ずるものがありますがそれが本人も含めて全方位に向けられていて、フジテレビの往年の名作『北の国から』の『北の国から 2002遺言』編で五郎が遺言に「みんな勝手にやれ」と記した諦め、安堵、希望と同じく宮﨑駿監督もそこまで到達したんだなあという思いを感じました。
物語の筋がないという鑑賞もそう言われればその通りとも言えます。ですが私は物語も筋もあると思います。 眞人が母親の死を受け止めきれず夢にまで見て泣いてしまう場面や転校先の生徒との喧嘩の後に自分で自分の頭に石をぶつけて傷を付けて周りにかまってもらう幼さの発露もありつつ、つわりで寝込んだ義母をそっけなく見舞った帰りがけに煙草を箱ごとくすねる演出は自分の置かれている環境の中での価値を把握していることが明確ですでに小さい大人です。幼さと大人さ、それが混じり合った青少年期特有の少年である眞人が塔の世界/下の世界で自ら決断を積み重ねそこから現実に帰ってきた時のインコの糞まみれな姿はまさに現実に向き合った演出でしょう。そこに物語も筋もあると私は思います。
また、個人的には母性の物語としては解釈していません。今までのジブリ作品や宮﨑駿監督の自己体験が多分に反映されてはいると思いますがそこを中心に据えた作品ではないと考えています。また、ヒミもナツコもキリコもエヴァのマリ(ヒロイン、福音)ではないと考えています。あくまで眞人が自分の現実の道を進む物語だと考えます。終盤の場面でヒミが自分の選択で眞人を産む、そして死ぬのを理解して扉の向こうの現実へ進むことがそれに現れていると思います。前半の母親の死を受け止められない演出はすべてそこへ向かうための組み合わせでしょう。積み木を自分で積まなかったのに1つだけ持ち帰ったのはその決断の象徴としての戦利品ですね。
とはいうものの、冒頭にも書いた通り宮﨑駿監督からの「みんな勝手にやれ」「自分の現実を進め」という物語であるのは大前提として、宮﨑駿監督はそれを踏まえて自分のやりたいことを全部詰め込んだというのはとても感じますね。ワラワラを食べるペリカンをヒミがワラワラごと燃やしちゃうのも作品冒頭の眞人主観で人と炎をかき分けるのも勢いを感じますし、墓の存在や門に刻まれた言葉もナツコが森(塔の世界/下の世界)へ行くのも伏線回収がなくてもうこれは宮﨑駿監督が好きなものを詰め込んだだけなのにその演出の圧倒的な説得力は流石ですね。 このあたりは周回観劇して考察したいと思います。
ちなみに、今作品がジブリのセルフオマージュと言われているようですが、庵野秀明監督の作品好きの1観客としては塔の世界/下の世界の崩壊が『ふしぎの海のナディア』の最終話を連想されて、実際に制作にカラーも参加しているしふふふとなりましたね。
最後になりますが、今作品をこれほどの熱量で作ってくれた宮﨑駿監督とジブリと関係者各位には感謝です。そしてこれが宮﨑駿監督の最後の作品ではなくまた作品を作ってくれることでしょう。外に出て自然を感じろと言いつつDVDを蒐集していたり、引退宣言をしたのに今作品を作ったり。次回作品はCGやGAIをふんだんに使ったショート動画の詰め合わせかもしれません。これからの宮﨑駿監督に期待ですね。